後出し、小出し、ダメ出しをすれば、むしろ遺産分割協議はこじれてしまいます

昨年は、年末になって不意打ち的な衆議院の解散総選挙が行われました。特に、国民の間で意見が二分するような重要なテーマを意図的に避けて選挙期間をやり過ごし、選挙が終わってしまえばすべて信任されたと理解してしまうようなやり方では山積する様々な問題を解決することはできるはずがない、と考えているのは私だけではないと思っています。

本来であれば、意見が分かれるテーマこそ双方の意見を十二分に聞かなければならないはずです。反対意見にも謙虚に耳を傾けつつ、汲むべき点は汲み、できる限り多くの人の意見を反映させる丁寧な対応をしなければならないのですが、現職の総理大臣からして自分と違う意見は『見解の相違』、少しでも批判されると感情的になってしまうのですから、一般庶民にとってはますます暮らしにくい世の中になってきていると感じてしまうのも無理はありません。

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そんな『後出し、小出し』の手法が、いま遺産分割協議の場面でもしばしば行われるようになってきたことをとても不安に思っています。

人が亡くなると、その瞬間に相続が発生してしまいます。そして、遺言書がない場合、誰が何を相続するかの話し合い、いわゆる遺産分割協議をする必要があるのですが、残念なことにもはや当事者だけでこの話し合いを冷静に進めることができる方は少なくなる一方です。相続財産を独り占めしようとまったく話し合いすらしようとしない人や、相続財産がいくらあるのか他の相続人には一向に教えようとしない人、ひどい人になると何の話し合いもしないで勝手に遺産分割協議書を作成して他の相続人に強引に署名・押印を迫るというやり方をする人もいます。さらに、こういう自分本位で身勝手な考え方をする相続人の片棒を担ぐ法律専門職もいると聞いており、これが相続トラブルを急増させている最大の原因にもなっています。

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確かに、長い人生の中で積み重ねられた経緯や事情は様々あるでしょうし、また介護や埋葬などすべての問題を法定相続分どおりに割り切るわけにはいきません。しかし、遺言書がない以上は法定相続が原則であり、そこから話し合いを始める最低限のルールは守らねばなりません。『後出しや小出し』といった手法では当事者の話し合いによる円満な解決などできるはずがありません。それ以上に、不信感が芽生えて早晩どうにもならないところまで拗れてしまうことでしょう。まずは、相続財産をすべての相続人に明らかにし、これまでの経緯や事情を遠慮なく相続人全員に話してもらったうえで、最後はお互い譲るべきものは譲る、とてつもなく遠回りに見えるかもしれませんが当事者の話し合いによる円満解決を望むのであればこの方法しかないと、これまでの実務経験から自信を持って断言できます。

だからこそ、今年も相続まちなかステーションの加藤俊光は、当事者の話し合いで円満に相続問題の解決ができる法律専門職として、ひとりでも多くの方に『公明正大・丁寧・納得の上での妥協に基づいた遺産分割協議』のご提案をし続けていきます。