相続遺言 私にも関係ある?

相続に関心を持つ人はたった1割しかいない

「遺言書の準備はできていますか?」と伺うと、ほとんどの方は『うちには大した財産もないから大丈夫』、『子供たちはみな仲が良いので心配いらない』とおっしゃいます。さらに、単身世帯の方では、『天涯孤独の自分が亡くなったところで悲しむ人も困る人もいないから、自分には相続など関係ないのない話だ』とお考えになっていることがよくあります。

一般の方にとっては、相続を身近に感じる機会がそれほど多くないのも仕方のないことかもしれません。また、相続の問題を考えるということは、自分自身のエンディングを考えることにつながるわけですから、そのうち時期が来たら考えればよいのではないか、とついつい先送りしてしまいがちです。

そんな方のために、まずは川柳のようなとても覚えやすい法律の条文をひとつだけご紹介させていただきます。

あなたの生涯で相続に関わる可能性は99%です!

相続は、死亡によって開始する。(民法882条)

なんとも覚えやすい、まるで何かの標語のように感じる方がいるかもしれませんが、これは民法887条という法律の条文です。

この民法887条が何を規定しているのかを解説すると、「ある人が亡くなった場合、その瞬間に亡くなった本人や相続人の意思はもちろんあらゆる事情も一切考慮されることなく、全ての相続財産が法で定められた相続人に相続されてしまう」ことを示しています。

また、どのような財産が相続財産となるのか、あるいは誰が相続人になるのかはすべて法律に規定されており、たとえ本人が知らなかったからといっても相続が発生しないということにはならないのです。ここに、相続にまつわるトラブルが後を絶たない最大の原因がある、と私は考えています。

さらに相続財産というと、土地や建物、預貯金や株式などのプラスの財産を思い浮かべることができる方は多いのですが、実は借金や連帯保証人としての地位などマイナスの財産も含まれることをご存じない方も少なくありません。子のいない夫婦で夫が亡くなった場合には妻が全財産を相続できる、あるいは、生涯を独身で過ごしすでに親兄弟もなくなっているため相続人は誰もいない、などの誤解や勘違いをしている方が多く見受けられる事例もあります。

確かに、一生のうちでそう何度も経験するわけではない。しかし、一生のうちで一度も経験しないまま生涯を終える人は、おそらく1000人にひとりもいないでしょう。ほぼ全員が、一生のうちに必ず2~3回は経験するのが相続なのです。

相続・遺言を他人事ではなく自分のこととして考えてみませんか?

ここ数年、一般の方の間でも相続が争続となってしまうケースが急増しています。相続トラブルに巻き込まれてしまった大半の方は、『まさかこんなことになるとは思わなかった』と後悔しながらも、問題を解決するために精神的にも金銭的にも多大な負担を強いられる場合がほとんどです。

相続を正しく理解するとともに、あらかじめ適切な措置を施すことによって、いま急増している相続トラブルの99%は未然に防止することができます。さらに、相続人同士の絆を壊すことなく相続財産とともに被相続人の想いまでもが穏やかに円満に受け継がれることができるのです。

その事をご存じない方がとても多いのですが、それはこれまで一般の方に相続を考えるきっかけを提供してきた専門家は皆無でしたので無理のないことです。だからこそ、相続まちなかステーションはひとりでも多くの方に訴えかけていきたいのです。

いつかあなたがこの世を去った後で、残された家族はあなたの想いを知ろうとするあまり醜い争いになってしまう可能性は本当にないと断言できますか。あなたの大切な家族を思いがけない相続トラブルから守ることができるかどうか、それはほかならぬあなたのちょっとした心がけにかかっているのです。

相続を他人事としてではなく、自分自身のこととして考えてみるひとつのきっかけとして、まずは最近すっかり顔を合わせていないご両親やご兄弟にご連絡を取ってみてるのもいいのかもしれません。そして、いま自分に万一のことがあったときに、自分の相続人は誰になるのかを正しく把握するところから始めてみてはいかがですか。