平塚でおなじみの相続の専門家がラジオで語る 相続相談の現場から 3 ~ 見落としがちな遺留分のポイントについて ~
3月も下旬に入り、桜の開花が待ち遠しい季節となりました。相続まちなかステーションのある神奈川・平塚でも、昼間はコートを脱ぎたくなるような暖かさを感じる日が多くなってきています。そんな、3月18日(木)の昼下がりにFM湘南ナパサ『ナパサタイムス☆アフタヌーン』にコーナー出演してまいりました(新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、今月もリモート出演です)。
おかげさまで、2011年7月の初出演からナパサのコーナーでお話をさせていただいておかげさまで116回目の出演となりました。今年1月からは、弊所に寄せられた相談事例をもとにケーススタディを行っていますが、第3回目の今月は「遺留分」を取り上げてみたいと思います。相続に関する関心の高まりもあり、遺言書を書いてみようと思われる方も少しずつ増えてきましたが、『遺留分』を考慮せずに書いてしまったためにあまり役に立たない遺言書となってしまうケースが急増していることを皆さんはご存じでしょうか。遺言を書くにあたって、ぜひとも見落としてほしくないポイントについて事例をもとにお話ししていきたいと思います。
まずは、今月もテーマに関わる出題をしますので皆さんも一緒に考えていきましょう。
次の、相続や遺言に関する設問は、正しいか間違っているかを答えてください。
【設問】
3か月前に夫が亡くなりました。私どもには子どもはいません。生前、夫は全財産を私に相続させる旨の遺言書を作成していました。ところが、最近になって夫の母と姉から、「たとえ妻であっても全財産を相続するのはおかしい。自分たちにもいくらかの相続権があるのだから何割かを渡すように」と申し入れがありました。
このような場合であっても、私は遺言書通り、夫の全財産を相続することができる。
さて、設問の記述は正しいでしょうか?それとも間違っているでしょうか?
本問では、子どものいない夫婦のおっとが全財産を妻に相続させる旨の遺言書を作成し、その後亡くなっています。遺言書が有効であれば、妻は夫の全財産を相続できることになりますが、法定相続人には遺言書によっても奪われることのない最低限の相続権が認められており、これを「遺留分」といいます。
遺留分は、兄弟姉妹を除く直系尊属や子、配偶者に認められており、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年以内であれば、法定相続分の半分を取り戻すことができるとされています。
これを本問についてみると、夫が亡くなったのは3か月前であり、かつ夫の姉は遺留分権利者ではありませんが、夫の母は遺留分権利者であることから遺留分が認められます。今後は、夫の母との話し合いになると思われますが、夫の母がどうしても遺留分が欲しいということであれば、夫の母に対して遺留分に相当する金額の支払いを免れることはできず、結果的に遺言書通りに全財産を相続することはできないことになると思われます。
以上より、本問は誤りと判断できるでしょう。
【身近な相続事例の検討 ~ 遺留分で見落としがちなポイント ~】
遺言書があればどんなことでも思い通りになると勘違いをされている方を時折見かけることがあります。一定の相続人には、例え遺言書によっても奪うことのできない最低限の権利が認められており、これを遺留分といいます。
権利意識の高まりや低迷する経済情勢から考えても、あえて遺留分があるのにそれを要らないと考える方は稀です。せっかく遺言書を作成されるのであれば、わざわざ紛争になるような遺言書ではなく、各々の相続人に対する配慮が散りばめられた遺言書を作成されたらいかがでしょうか。
思いやりがあふれる遺言書はどんなものか、教えてほしい。いますぐまちなかステーションに相談する
今回のテーマは『相続相談の現場から 3 ~ 見落としがちな遺留分のポイントについて ~』でしたが、せっかく書かれた遺言書の内容によっては、残された相続人に新たな紛争を引き起こす事例が少しずつ増えています。ひとりでも多くの方が、他人ごと思わずにご自分たちにも起こりうるという認識を持っていただくとともに、遺言書を書かれる方は是非とも事前に私たち法律専門職に相談していただけることを願っております。
これからも、相続まちなかステーション 代表 加藤俊光は、身近な相続・遺言に関するテーマを題材にしながら、地域の皆様に役立つ情報をご提供できるよう頑張ってまいります。最後になりましたが、山田博康さん、そしてお聴きいただいたリスナーの皆様、ありがとうございました。