相続法改正で争続は解消するか?!(4) 「結婚生活20年」が大きな分かれ目になるなんて!
およそ40年ぶりに、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(以下、改正相続法)が成立しました。今回の法改正の目的は、社会の高齢化の進展とともに相続開始時において高齢化した配偶者の保護を図るとともに、遺言の利用を促進することで相続をめぐる紛争を防止することにあると言えるでしょう。そこで、これまで神奈川・平塚を拠点に8年間相続専門に取り組んできた法律専門職の立場から、改正相続法は私たちにどのような影響を及ぼすのか、この数年で急増中の相続トラブルを未然に防止することができるのかについて、6回シリーズで徹底分析していきます。
さて、4回目は「婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与等」を見ていきます。これまで、相続人に対して生前贈与等が行われた場合において、その後に相続が開始し遺産分割を行う場合には、原則としてその贈与を受けた財産も遺産に組み入れて相続分を計算するとともに贈与を受けた分を差し引いて遺産分割における取得分を定めなければなりませんでした。そのため、せっかく贈与を受けたとしても、「遺贈の先渡しを受けたもの」として扱われてしまい、結果として贈与がなかった場合と同じ金額の財産しか相続できないことがありました。しかし、これでは残された配偶者は遺産分割では少ない遺産しか受け取れず、また被相続人の生前の意思も全く反映されないためあまりにも不都合ではないかとの声に応えるかたちで、婚姻期間が20年以上にわたる夫婦間で居住用不動産の贈与が行われた場合には、遺産分割において「持戻しの免除」の意思表示があったとする推定規定を新たに新設し、配偶者が遺産分割においてより多くの財産を取得することを可能にするとともに、夫亡き後の妻の生活安定を図れるようにしました。
しかし、日々一般市民の相続手続きに関与している法律専門職にとっては、今回の相続法改正、特にこの「持戻し免除の推定規定」の新設は、内容や効果に大きな疑問を感じています。そもそも、(1)どこかで線を引かなければならないとはいえ、なぜ20年なのでしょうか。また、(2)「あくまでも婚姻」は法律婚に限られていますが、事実婚や内縁関係はなぜ対象外とされているのかでしょうか。むしろ、残された配偶者の保護を図ることが趣旨ならば、事実婚や内縁関係のほうが保護の要請は高いのではないかとさえ思えるのは私だけでしょうか。確かに、特に女性の平均寿命が80歳代後半まで伸びている現代においては、残された配偶者の生活を安定させることに全く配慮がなかった従来の規定と比べればやや前進ですが、これで「夫亡き後の妻の生活は大丈夫だ」と安心するのはちょっと早い、配偶者以外の他の相続人との人間関係を壊さずに残された人生を安心して過ごすためには、さらにもうひとつコツがあるのにそこを落としてしまっている点をとても残念に感じています。
では、そのコツとはいったいどうすることだと思いますか。被相続人が公正証書で作成した遺言書のなかで残された配偶者に対する配慮をしっかり見せておけば、夫亡き後の遺産分割はもちろんその後の生活でも困ってしまうようなことはほぼ未然に防ぐことができます。さらに、相続手続を迅速・円満に行うためにも、遺言書の中で遺言内容を確実に実現できる良心的な代理人(遺言執行者)を指定しておくことも忘れないでください。弊事務所にお越しいただければ、私が42歳の時に書いた実物の遺言公正証書をお見せしながら、相続法改正に惑わされず残された配偶者の生活を守ることのできるコツをあなただけにお教えします。
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だからこそ、これからも私は、遺言者の想いと残された配偶者の願いが理解できる法律専門職として、ひとりでも多くの方に『夫亡き後の妻を困らせない遺言書』のご提案をし続けていきます。