いつどこで遺言を書くか?! それが大きな分かれ道になることもあります!

暮れも押し迫った昨年12月の下旬のこと、平塚市内の病院に入院されている70代の女性の公正証書遺言作成のお手伝いをさせていただく機会がありました。

160113 病室

まだ40代だったお若い頃に、突然ご主人を病気で亡くされてからも女手ひとつで育ちざかりの3人の息子さんを立派に育て上げて、ようやくご自身の人生を謳歌しようとしていた矢先にご病気になってしまったようで、今後のことをお考えになってお知り合いの方のご紹介で相続まちなかステーションにご相談をされたのがきっかけでした。

彼女の主治医やご家族とも相談した結果、今回は特別に公証人に病床への出張を依頼して公正証書遺言を作成する方法を選択することになりましたが、彼女の病状を考えれば遺言作成はまさに時間との戦いでした。戸籍の収集や財産調査をはじめとする基礎調査や遺言内容の打ち合わせは、私のこれまでの経験では2か月程度を要することが多かったのですが、今回は何とか3週間程度で済ませてどうにか年内に遺言公正証書を完成させることができました。無事に遺言書が完成した際には、彼女は病室のベッドに起き上がり『間に合って本当に良かった。ありがとうございました』と涙ながらに喜んでくださいました。病床への出張による遺言公正証書の作成という貴重な経験をさせていただいたこと、残り少ない彼女の人生が少しでも安心して過ごすためにお役にたてたとすれば、私のほうこそ頭が下がる思いでいっぱいです。

今回は、薄氷を踏む想いで遂行・完了することができた遺言作成業務でしたが、もしもこれから遺言書の作成をお考えになられている皆様には、できることであれば病院や施設に入る前の元気な段階で始められることを強くお勧めします。

それは、第一に、きちんとした内容・形式の遺言書作成にはある程度の時間がかかるからです。私の経験上ですが、公正証書による方式の場合、2か月は見ていただくようにしています。そのためには、万一にも、作成の途中で認知症になってしまい、あるいは亡くなってしまうことは防がなくてはならないからです。さらに、第二に、遺言者自らが公証役場に赴いて作成した遺言書は、病室や施設で作成した遺言書に比べて各段に無効や紛争になりにくいという効果が期待できるからです。

もちろん、法的にはいつどこで作成した遺言書かによって、その効力には何ら差異はないとされています。しかし、相続実務上、遺言書の作成過程や内容に疑義が生じることで相続トラブルになってしまうケースが急増しています。あなたがこの世を去った後で、あなたの大切な人たちを不毛で醜い相続トラブルに巻き込んでしまうか、それともあなたの想いを推し量りながら速やかに円満に相続手続を進めることができるか、それはあなたのちょっとした配慮と思いやりにかかっているのではないでしょうか。

160113  富士山

これからも私は、遺言者の想いと家族の願いが理解できる法律専門職として、ひとりでも多くの方に『残された家族が争わないための想いを伝える遺言書』のご提案をし続けていきます。