相続法改正で争続は解消するか?!(5) 「夫亡き妻の住まい」はどこまで安心できるか?!
およそ40年ぶりに、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(以下、改正相続法)が成立しました。今回の法改正の目的は、社会の高齢化の進展とともに相続開始時において高齢化した配偶者の保護を図るとともに、遺言の利用を促進することで相続をめぐる紛争を防止することにあると言えるのではないでしょうか。そこで、これまで神奈川・平塚を拠点に8年間相続専門に取り組んできた法律専門職の立場から、改正相続法は私たちにどのような影響を及ぼすのか、この数年で急増中の相続トラブルを未然に防止することができるのかについて、6回シリーズで徹底分析していきます。
さて、5回目は「配偶者短期居住権」を見ていくことにします。これまでは、被相続人が遺言を残さずに死亡した場合、死亡と同時に相続が開始し被相続人が所有し居住していた建物も相続財産として相続人全員の共有状態になってしまいました。しかし、これでは土地建物が相続財産の大半を占めて現預金がほとんどない場合、他の相続人から売却による遺産分割を主張されることで残された高齢配偶者の住まいが確保できなくなる事例がよく見られました。そこで、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合、配偶者の短期的な居住の利益を保護するために、(1)遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間、または(2)相続開始の時から6か月を経過するまでの間のいずれか遅い日まで、無償でその建物に住み続けることができる「短期配偶者居住権」が創設されることになりました。
しかし、日々一般市民の相続手続きに関与している法律専門職にとっては、今回の相続法改正、特にこの「配偶者短期居住権」の新設は、内容・効果に少しばかり疑問を感じています。まず、(1)「配偶者短期居住権」は法律婚の配偶者に限られており、内縁配偶者や事実婚のパートナーには認められませんが、残された配偶者の居住の保護の必要性は法律婚かどうかに限られないのではないでしょうか。また、(2)「遺産分割により建物の帰属が決まるまでの間」配偶者が無償で建物に居住できることになると、遺産分割協議を一層複雑化させ紛争に発展させる可能性があるのではないでしょうか。もちろん、高齢配偶者の居住の保護は必要ですが、これでは相続人どうしの感情的な人間関係を壊すことなく速やかに円満に相続手続が進められるとは思えません。むしろ、相続トラブルの種があちこちに見え隠れしているのではないかと不安に感じてしまうのは私だけでしょうか。
被相続人が公正証書で有効な遺言を作成しておけば、残された配偶者の居住の問題はほぼ回避することができます。そして、相続手続を迅速・円満に行うためにも、遺言書の中で遺言内容を確実に実現できる良心的な代理人(遺言執行者)を指定しておくことも忘れないでください。弊事務所にお越しいただければ、私が42歳の時に書いた実物の遺言公正証書をお見せしながら、相続法改正を上手に活用しつつ、さらに残された配偶者の居住の不安を解消し確実なものにするためのたったひとつの秘策をあなただけにそっとお教えします。
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だからこそ、これからも私は、遺言者の想いと残された配偶者の願いが理解できる法律専門職として、ひとりでも多くの方に『夫亡き後の妻を困らせない遺言書』のご提案をし続けていきます。