平塚でおなじみの相続の専門家がラジオで語る ~ 身近な相続におけるケーススタディ 1 子どものいない相続 ~
やっと冬らしさが増してきた厳しい寒さが身に堪える午後でした
お正月気分もすっかりなくなり1月も後半に入りました。相続まちなかステーションのある神奈川・平塚でも、ここ数日寒い日々が続いています。そんな、1月19日(木)の昼下がりにFM湘南ナパサ『ナパサタイムス☆アフタヌーン』にコーナー出演してまいりました。
番組の内容 相続におけるケーススタディ 1 ~ 子どものいない相続 ~
2011年7月以来、おかげさまでナパサのコーナーでお話をさせていただいて早いもので今回で67回目の出演となりました。今月からは、3回にわたって相続まちなかステーションに実際に寄せられた相談事例をもとに誰にでも起こりうる身近なテーマを題材にケーススタディをしていきたいと思います。
一度くらいはどこかで耳にしたことのあるテーマかもしれませんが、意外と誤解や思い違いをされている方が多いというのが私ども法律専門職の印象です。みなさんは大丈夫でしょうか。今月も、テーマに関わる出題をしますので皆さんも一緒に考えてみてください。
次の、相続や遺言に関する設問は、正しいか間違っているかを答えてください。
【設問】
A夫妻には30歳になる独身のひとり息子がいたが、8年ほど前に冬山に登山に出かけて遭難して以来ずっと生死不明であったため、先月裁判所によって失踪宣告もなされた。このような事情の下で、今後万一夫が亡くなってしまった場合、妻は夫の財産をすべて相続することができると考えてよい。
さて、設問の記述は正しいでしょうか?それとも間違っているでしょうか?
まず、(1)子は配偶者とともに第一順位の相続人となりますので、子がいる場合には他の相続人を考える余地はないことになります。しかし、(2)設問中のA夫妻には、30歳になる息子がいたものの8年前から生死不明の状態が続いており、これをどのように考えるべきかが問題となります。確かに、生死不明の状態では相続人から除外されることはありませんが、先月裁判所によって失踪宣告もなされていることから、A夫妻の息子は7年間の期限が満了した少なくとも1年前には死亡したとみなされることになります(普通失踪・民法30条1項、同31条)。そうなると、(3)A夫妻には初めから第一順位の相続人である息子はいなかったと考えられることになり、第二順位の相続人である両親、あるいは第三順位の相続人である兄弟姉妹の存否を確認する必要が出てきます。本問では、第二順位あるいは第三順位の相続人の存否は挙げられていませんが、それらを検討せずして相続人が配偶者である妻のみと考えることはできません。
以上より、本問は誤りと判断できるでしょう。
【相続におけるケーススタディ 1 ~ 子どものいない相続 ~】
あくまでも私見ですが、近年の晩婚化の影響で子のいない夫婦は少しずつ増えていると捉えており、一方で高齢化が進んでいる現代では、親世帯よりも先に子が亡くなることも珍しくなくなってきているようです。
しかし、そのような事情の下で相続が発生した場合には、速やかに円満に解決できる場合ばかりとは限りません。これまでの経緯や感情的な行き違いがあるなどの理由によって、配偶者と両親あるいは兄弟姉妹と冷静に話し合うことができない場合や、親族関係の希薄化・疎遠化などによって話し合いの場を持つための接触すらできないなどの思わぬ相続トラブルが発生してしまう事例も年々増加しています。決して他人事とは思わずに、今からできることがあるということを知っていただきたいと思います。
子のいない相続の注意点
1 相続人を正しく把握しましょう
2 40歳を過ぎたら、お互いにどうしたいのか夫婦でよく話し合いましょう
3 夫婦そろって遺言書を作成するなど、早いうちから準備をしましょう
番組出演の感想
今回のテーマは『相続におけるケーススタディ 1 ~ 子どものいない相続 ~』でしたが、どこの家庭にも起こりうる身近な相続問題について、一般の方の間では意外にも他人事として捉えてしまう方が多いことを日頃から感じ取っておりました。そこで、ひとりでも多くの方が正しい認識を持っていただくとともに、判断に迷った時には私たち法律専門職に対しても相談することの必要性についても理解していただくきっかけをご提供できたとすれば何よりであると感じました。
2017年も、相続まちなかステーション 代表 加藤俊光は、身近な相続・遺言に関するテーマを題材にしながら、地域の皆様に役立つ情報をご提供できるよう頑張ってまいります。最後になりましたが、山田博康さん、そしてお聴きいただいたリスナーの皆様、本当にありがとうございました。